てんかんの治療として注目されるCBDについてと、動物のてんかん発作について、「てんかんってそもそもどんな病気?」「てんかん発作が起きてしまったらどうしたらいいの?」「CBDはなぜてんかんにいいといわれているの?」といった疑問を、獣医師の藤原先生に監修いただき、記事にまとめました。てんかんは、年齢・犬種・性別にかかわらず、だれでも起こりうる症状。また、脳の病気のため、シニア期になると(てんかんに似た症状を含め)発作が起こりやすくなる病気です。いざとなったときに、飼い主の皆さんが落ち着いて対応できるようにしましょう。
目次
てんかんとは、脳の神経伝達で不具合が起こり、けいれんや発作が起きる病気。
原因はまだはっきりとはわかりませんが、大きく分けて「特発性」と「構造的」の2種類があります。
◎特発性てんかん:検査しても異常がみつからない原因不明のてんかん。
◎構造的てんかん:脳に何らかの障害が起きたり、脳の一部が傷ついたことで起こるてんかん。出生時のトラブルや、低酸素、脳炎、髄膜炎、脳出血、脳梗塞、脳外傷、アルツハイマーなどが原因で脳が傷害を受けた場合に起こります。
※脳以外の異常(低血糖、低酸素、肝臓や腎臓が悪すぎる等)で起こる痙攣発作は、「反応性発作」といい、てんかん発作とは区別します。
引用:犬と猫のてんかん読本 第3版
どうぶつのてんかんのガイドラインでは、「24時間以上の間隔をあけて、半年以内に少なくとも2回以上のてんかん発作(主にけいれん)が認められる脳の病気。」と定義されています。
ポイントは以下の3点。
年に1回や、初めての発作など、頻度の少ない発作でははっきりと診断が下りないことが多いため、愛犬愛猫の発作を見て不安になっている飼い主の方にとっては「薬の処方もなく、様子見」とされることで不安が募ることもあるかもしれませんが、これはきちんとてんかんという病気のガイドラインに沿った診断結果によるものです。
とはいえ一度でも発作が起これば不安になってしまうのは仕方がないことなので、主治医にしっかりと症状や不安について相談するのが大切です。
世界保健機関(WHO)では、てんかんは「脳の慢性疾患」で、脳の神経細胞(ニューロン)に突然発生する激しい電気的な興奮により繰り返す発作を特徴とし、それに様々な臨床症状や検査での異常が伴う病気と定義しています。
ですので、てんかんの主な症状としては「痙攣(ケイレン)」の発作を起こすことを差しますが、前兆やけいれん以外の症状が出ることもあります。
動物の発作の前兆としては、例えば次のようなものがあげられます。
その他にも、シニア期にみられる光への反応(びくびくする様子)も「ミオクロニー発作」というてんかん発作のひとつです。
年齢を重ねて、認知機能が低下したことで脳の機能異常が起こり、頻繁に光や音への反応が起こると、抗てんかん薬を処方されることもあります。
ただ、これはいわゆるてんかんの前兆(けいれん発作の前兆)ではないため、ミオクロニー発作が続くからといって、痙攣発作が起きるということではありません。
てんかん発作が起きたときに一番大切なのは「落ち着くこと」。
発作が起こるとそばにいる飼い主もパニックになってしまうものですが、どんな症状が出ていたのかを正確に記録しておくことで、その後、獣医師が治療方針を決めるのに大切な情報を提供できるようになります。
てんかん発作は通常何もしなくても数秒~数分で終わるものなので、発作が起きてしまったら落ち着いて、まずは動画や発作の継続時間を記録し、動物病院を受診しましょう。それらの記録があると、獣医師も診察・診断がしやすくなります。
<<重積(じゅうせき)発作は注意>>
てんかん発作は通常何もしなくても数秒~数分で終わるものですが、近い間隔で何度も続く「重積発作」には注意が必要。
一般的には、けいれんが5分以上続く場合や、意識が戻る前に短い発作を繰り返すような状態を「重積状態」といい、緊急度の高い症状と判断されます。このような様子が見られる場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
発作が起きたときに避けたほうがいい行為としては、以下のことが挙げられます。
怪我や窒息の可能性もあるため、発作が起きたらできるだけ落ち着いて優しく声をかけるようにしましょう。
小型犬や猫の場合は抱っこしたくなりますが、抱っこすることで人の心拍数から興奮が伝わってしまい発作が長引く可能性もあるため、抱っこも控えるのがよさそうです。
尚、猫のてんかん発作に多く見られる激しいけいれんでは、周囲の物にぶつかってけがをしたり、二次被害の危険があるため、激しく暴れるような発作の場合は速やかにケージ等の狭い場所に入れ、落ち着くまで様子をみてあげるようにしましょう。
世界的に目を向けると、CBDはすでにてんかんの治療薬として承認されている「エピデオレックス」というCBDオイルがあります。これが、2023年11月の秋の臨時国会で、日本でも治療薬として承認する方針が可決されました。
施行はまだ先になると思いますが、治療薬として認められて行けば、難治性てんかんのオプションとして保険医療の対象になっていくことや、研究もさらに進められていくことが期待されています。
(※2024年4月時点)
CBD(カンナビジオール)とてんかんについては人・ペット問わず研究が進められています。
一般的に、CBDの効果が期待されているのは原因がわからない「特発性てんかん」や、てんかん薬が効かずに原因もわからない「難治性てんかん」です。
てんかんという病気自体がまだまだ原因が解明されていないこともあり、研究中の部分も多いですが、一説では、CBDのもっている下記の作用が、てんかん発作の抑制に影響しているのでは?と言われています。
世界ではすでにCBDがてんかん薬として認められている国もあり、日本でも2023年より法改正が整備され、さらに研究が進んでいく領域ですので、今後より詳しい作用機序が分かってくるかもしれません。
犬におけるてんかんの臨床研究でも、「特発性てんかんの犬において、従来のてんかん治療にCBDの経口投与(CBDオイル)を加えることで、発作頻度の有意な減少が得られた」
引用;Stephanie McGrath et al. J Am Vet Med Assoc, 1,254(11),1301-1308(2019)
という結果が出ているものもあります。
どうぶつのてんかんにおいて、CBDが注目され、扱いやすい理由として、「副作用がほとんどない」こともポイントです。
どうぶつも高齢になると、てんかんと診断するための検査に体力的に耐えられず、てんかんと診断できなかったり、また、他にも何剤も薬を飲んでいるなどの理由で薬を増やせなかったり、てんかん薬の副作用を出させたくないときも多いです。
そんな時に、副作用がほとんどないCBDは、治療のひとつの選択肢になります。
CBDでてんかんの発作を抑えることができるかもしれないからと言って、飼い主の皆さんが自己判断することや、てんかんの診断が出ているにもかかわらず、勝手にお薬をやめて、代わりにCBDを与えるなどの判断は、決してしないでください。
痙攣(ケイレン)発作が起きたり、前兆が見られたりして「もしかしててんかんかも?」と思ったら、まずは必ず獣医師の診断をもらい、治療方針をすり合わせることが大切です。
また、すでにてんかん薬を与えている場合は、途中で量を勝手に変えたり、辞めてしまったりすると、あとから効いていた薬が効かなくなってしまったりするなど、治療の難易度が上がってしまうことがあります。決して自己判断せずに、薬の量や投与については獣医師と相談するようにしましょう。
CBDオイルは、人だけでなく、動物のてんかんにおいても、効果が期待できる成分です。まだまだ獣医師の中でもCBDオイルについての知識レベルはばらつきがあるのが現状です。
今後、CBDを主成分とした難治性てんかん薬が日本でも医薬品として承認される見通しがあるなど、CBD×てんかんの可能性については注目が高まっている分野と言えます。今後研究が進んで、さらに作用機序の詳細が解明されていき、より多くの方が選択肢として考えられるようになっていくと思います。