リラックス効果や美容効果などでヒトでも話題の成分CBD(カンナビジオール)。
最近では、ペット用CBDオイルも、動物病院をはじめとして、楽天やAmazon、ペットサロンなどでも目にするようになり、手軽に買えるようになってきました。
そんな話題のCBDは、犬や猫などペットに与えても問題ないのでしょうか?なぜ話題なのか?その効果や副作用、ヒト用のCBDオイルとペット用のCBDオイルの違いなどについてご紹介します。
目次
CBDはCannnabidiol(カンナビジオール)の略で、ヘンプ草から抽出される薬理成分の1種です。
ヘンプ草には、香りや色、苦みをを作る成分や、酸化を防ぐ成分など、植物が紫外線や乾燥から身を護るために多くの成分を作り出しています。
CBDは、それらの植物の薬理成分の一つなのです。抗酸化作用が強く、身体の細胞に本来備わっている身体調節機能に働きかけることから、その健康・美容効果が非常に注目されている成分です。
ヒト用でも話題の成分であるCBDは、CBDを摂取しやすいオイルに溶かして、「CBDオイル」という経口摂取するタイプのサプリメントとして摂取するのがポピュラーな摂取方法です。
このCBDオイルは、最近では欧米を中心にペット(犬や猫や馬)などでも広く利用が広がっています。
人用のCBDオイルと、動物用のCBDオイルの違いは主に「濃度」と「その他の添加物」にあります。
動物用のCBDオイルは、ヒト用のCBDオイルと比べて、「CBD濃度が低い」処方設計になっていることが多いです。これは、ペットとなる犬・猫の体がヒトよりも小さいことや、動物の方がCBDに反応する受容体(※CBDが作用する、細胞のセンサーのようなもの)が多いといわれる説があるためです。
ヒト用のCBDオイルは5%~30%、高いものだと50%濃度のものがあるのに対し、ペット用は1%~10%くらいで設計されているものが多いです。
人用のCBDオイルの多くの製品には、CBDオイルを飲みやすくするために、天然の製油などで香りづけしたものや、CBDと相乗効果も期待される「テルペン」と呼ばれる植物由来の成分、あるいはビタミンやその他の成分を添加しているものもあります。一方で犬・猫用は、犬や猫のアレルギーや食べてはいけないものを考慮した成分のみを配合して作られているはずです。
特に猫は元来肉食のため、植物のアレルギーがある可能性が高く、猫に製油を与えることは禁忌として扱われます。猫用のCBDオイルには製油やテルペンなどが含まれていないことを必ず確認しましょう。
CBDオイルを動物が飲むと、いったいどのような効果があるのでしょうか。
主にはこのような効果が期待できるといわれています。
イヌを対象に安全性と忍容性を確認する研究において、CBDは犬に重度の副作用を引き起こすことがなく、THCを含むCBDオイルとは異なり安全であることが示されています。
この実験では、CBDを単体で含むCBDオイル(2.5mg/kg)と、THC(テトラヒドロカンナビノール)という、同じくヘンプ草に含まれる成分とCBD両方を含んだオイルを、健康なビーグル犬に与えて副作用を調べる研究です。
CBD単体のオイル:有害報告 なし THC入りCBDオイル:嗜眠・低体温・運動失調
引用:
Preliminary Investigation of the Safety of Escalating Cannabinoid Doses in Healthy Dogs
Dana Vaughn et al. Front Vet Sci, 7,51(2020) PMID: 32118071
いずれの副作用も主にTHCを含むオイル(CBD/THCオイルまたはTHCオイル)で発生し、CBD単体で中等度および重度/医学的に重要な有害事象は発生しませんでした。
このTHCという成分は、日本では法律で禁止されている成分です。日本で販売しているCBDにはまず含まれていることはないとは思いますが、まれに海外製のCBDオイルから少量検出されることがありますので、犬用CBDオイルを買うときはTHCが非検出である証明書を公開しているメーカーから買うようにしましょう。
健康なネコに対しても、CBD単体オイルを長期間与えても副作用がないかどうか確かめる研究結果があります。
猫に対してプラセボオイル(CBDなしのただのオイル)、またはプラセボオイルに4mg/kgのCBDを26週間摂取させました。
長期研究全体を通じてALT(肝臓の値)は統計的に同じ。つまり、THCフリーのCBDを4mg/kg体重で摂取することで、健康な猫は血漿中に吸収され、26週間の長期給与をしても副作用がないことが確認されました。Healthy cats tolerate long-term daily feeding of Cannabidiol
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38327816/
鳥やウサギ、ハムスターなど、エキゾチックアニマルに関しては、まだ研究数が少なく、わかっていないことが多いです。
一方で、CBDが作用するエンドカンナビノイドシステムは、哺乳類すべてに確認されるため、CBDが作用する可能性は高いと考えられています。実際にCBDの基礎研究では、マウス(ねずみ)も使いますし、海外では、「馬用CBDオイル」を販売していたりします。
このことから、哺乳類であれば多くの動物に有効であると考えることもできますが、副作用などについてまだ研究されていないため、基本的には犬用は犬に、猫用は猫に使うなど、メーカーが標榜している使用方法の通りに使うのが無難です。
エンドカンナビノイドシステム(以下ECS)は、私たちの心身の健康を常に保つために働く身体調節機能のこと。
「認知・機能」「食欲・代謝」「神経保護」「感情抑制」「痛み・炎症」「睡眠・覚醒」「体温調節」「免疫調節」「生殖機能」「老化防止」など、多くの調節機能を司っています。
ECSは全ての哺乳類がもつ機能で、もちろん犬や猫などといったペットの身体にも備わっています。ECSを正常に機能させるために、 体内では「内因性カンナビノイド」という成分が産生されています。
ところが、内因性カンナビノイドは加齢やストレス、生活習慣などが原因でその産生量が減ってしまいます。必要な成分が体内で不足した状態を
「カンナビノイド欠乏症」といいます。神経疾患や免疫疾患、老化の加速の原因になると考えられています。
CBDは内因性カンナビノイドと同じはたらきをすることで、ECSが正常に機能することをサポートしてくれることが明らかになっています。
CBDは、エンドカンナビノイドシステム以外にも、いわゆる「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの産生を助ける働きがあることが確認されています。
セロトニンは、気持ちを穏やかにして、不安や興奮を和らげるホルモンでもあるため、セロトニンが多く作られると、ストレスや不安な気持ちがなくなったり、その結果として、よく眠ることができるようになる働きがあります。
CBDは、難治性てんかん薬として医薬品商品がすすんでいるほど、てんかんの症状に対して発作の頻度を抑えたり、重責(連続しててんかん発作が起こること)を抑制したりする効果があることで知られています。
なぜてんかんに効果があるのか、解明はまだされていませんが、CBDが神経伝達の働きや、セロトニンに働きかけて興奮を抑えること、結果として睡眠の質を上げることなどが、てんかんの症状に効く理由だと考えられています。
年齢を重ねると、身体の調整機能を働かせているエンドカンナビノイドシステムが機能しづらくなってしまい、免疫や、神経伝達にいろいろ不具合が起こりやすくなります。その結果、認知症のような症状が出たり、怒りっぽくなったり、毛が薄くなってしまったり、ニオイが出てきてしまったり等、身体の変化が起こります。身体調節機能全体をCBDがサポートしてくれることで、様々な方面から調子が整うことが期待できます。
CBDは、痛みを抑える効果があることも知られています。動物ではまだまだ研究の途中ですが、犬において、関節炎の痛みを和らげて活動量を上げるといった研究結果も出始めています。
CBDが幸せホルモンともいわれるセロトニンに働きかけることにより、緊張しやすい敏感な動物や、興奮しやすい動物、不安になりやすい動物たちのストレスケアに使うことができます。
いつもと違う環境(動物病院やトリミング)の前や、花火・雷など大きな光や音の刺激がストレスになるときも、CBDを飲ませてあげると落ちつけるかもしれません。
CBDと犬の研究において、CBDは舐めたり食事に混ぜる給与方法以外にも、皮膚に直接塗布することで皮膚の細胞に存在吸するエンドカンナビノイドシステムに働きかけることで、アトピーの痒みや症状を抑える効果があることも研究され始めています。
CBDは犬や猫にとって副作用がなく、様々な効果が期待できる成分です。身体の負担を少なくしたいシニア期の子や、お薬の量を増やしたくない子、お薬を飲むほどまで行かないちょっとした不調、ストレスケアなど、長期的なケアができるサプリメントとして試してみるのはいかがでしょうか。